2008 Fiscal Year Annual Research Report
金属・絶縁体転移近傍で発現する新しい量子状態の解明
Project/Area Number |
08J04979
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井村 敬一郎 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 金属絶縁体転移 / 価数揺動 / 多重極限下物性測定 |
Research Abstract |
圧力誘起金属絶縁体転移を示す典型物質であるSmSの中間圧力相(golden phase)における基底状態解明のため、以下の2つのアプローチにより、実験的研究を進めた。 1、低圧相(black phase)を用いた研究:絶縁体相であるblack phase(P_<c1>〜7kbar以下で発現)に強磁場を印加することで、エネルギーギャップE_gが磁場で大きく減少し、金属化を示すことを見出した。さらに、E_gに対する圧力と磁場の効果が等価であることを指摘した。これは今までに無い新しい知見であり、black-golden相転移のメカニズム解明に向けて、大きなヒントとなり得ると期待される。また、上記磁場効果は、従来の「black phaseは非磁性絶縁体である」というモデルでは説明不可能な現象であり、理論的に予言されている磁気ポーラロンなどが形成されている可能性が考えられる。 2、golden phaseの直接観測:電気抵抗・ホール効果・熱膨張測定を同一試料・同一圧力において測定し、温度・圧力相図を完成させた。その結果、体積の飛びを見出したことから、golden phase内の磁気転移T_Nに、3重臨界点の存在することを新たに明らかにした。これは、磁性の発現する臨界圧力P_<c2>近傍の低温において、価数が不連続シフトすることを示すものである。この結果は、現在活発に研究がなされている、量子臨界点近傍の物理の解明に向けて、有益な情報を与えることができると考えられる。一方、中間圧力相(P_<c1><P<P_<c2>)においては、特性温度T_0が存在することを見出し、T_0以下において、何らかの束縛状態が形成していることを示す結果を得た。今後は、中間圧力相における価数の温度・圧力変化に着目して研究を進める予定である。
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Research Products
(6 results)