2008 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語比較言語学の枠組みにおけるリトアニア語のアクセントの研究
Project/Area Number |
08J04987
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 瑤子 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リトアニア語 / 音調アクセント / acute付与 / 印欧語比較言語学 / 歴史音韻論 / n-語幹名詞 / 語末音調 |
Research Abstract |
本研究は、印欧語比較言語学の枠組みの中で、リトアニア語の音調アクセントがどのように付与され得るのかを解明することを目的としている。まず、印欧語比較言語学の分野で近年議論が活発になっているSaussure effectと呼ばれる音韻論的問題について、リトアニア語のアクセントを手がかりとした考察を学術論文としてまとめた(現在査読審査中)。これにより、歴史的データから期待される音調アクセントとは異なる音調を持つリトアニア語の単語のうちのいくつかについて、合理的な歴史的解釈を提案することができる。類似領域を研究している他の研究者からの意見を得ることができれば、それを反映した形でこの論考を更に発展させたいという希望を持っている。また、リトアニア語の歴史的な音調アクセント付与規則(より限定的には「acute付与」)についてすでに提出されている、主だった2つの解釈を検討し、今後の研究の基盤となる枠組みを採用した。しかし、その枠組みにおいてさえ、リトアニア語のn-語幹名詞の単数主格形の語末音調はその歴史音韻論的説明が困難であったが、この問題についても、本年度実施した研究によって新たな見解を引き出すことが出来た(日本言語学会第138回大会(2009年6月20日)の口頭発表に採用決定)。これにより筆者が採用したアクセント付与規則の枠組みの弱点が補強されて枠組み自体の正当性が強化され、その結果リトアニア語の音調アクセント付与規則をめぐって現在まで成されてきた議論に、解決へ向けての新たな方向性を与えることができると期待される。
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