2008 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素化分子の特異な電子構造を基盤とするヘム酵素の反応空間設計と触媒機能制御
Project/Area Number |
08J05035
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤城 貴史 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シトクロムP450 / ヘム / 過酸化水素 / 不斉酸化 / 人工酵素 / 反応空間 / フッ素 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本年度は,擬似基質が結合することによるP450_<BSβ>の構造変化を調べるため,基質非結合型及び擬似基質ヘプタン酸が結合したP450_<BSβ>のX線結晶構造解析を行なった.その結果,P450_<BSβ>の全体構造には大きな変化は見られなかったが,基質非結合型及びヘプタン酸結合型P450_<BSβ>の活性中心は,天然基質(長鎖脂肪酸)が結合している場合に比べ柔軟であることが分かった.また基質の結合に伴う70番目のロイシンの構造変化によって,過酸化水素の取り込みに重要と考えられている親水性チャネルが開かれる制御機構が示唆された.この結果は,P450_<BSβ>か過酸化水素で駆動するという特徴を理解する上で非常に重要である.同様の構造変化は,ヘプタン酸結合型でも見られ,デコイ分子により過酸化水素の取り込みが「ON」となっていることが明らかとなった. チオアニソールの酸化反応で様々な擬似基質と,反応の不斉選択性との関連性を検討した.その結果,すべての水素原子をフッ素化した直鎖状のカルボン酸を擬似基質として用いた場合,触媒活性が全く見られないことが明らかとなった.これは,導入されたフッ素原子により活性中心の疎水性が増加して,過酸化水素の活性部位への侵入が抑制されたためと考えられる.一方,擬似基質のスクリーニングの過程で,不斉選択性の反転を可能にする鍵となる炭素骨格を見いだした.今後は,不斉選択性の反転に鍵となる骨格を有する擬似基質への部分的なフッ素原子の導入を検討し,反応空間を設計していく.
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