2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト体内での進化の数理的研究:発がんおよび薬剤耐性獲得機序の解析
Project/Area Number |
08J05040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
波江野 洋 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 発がん過程 / 進化 / 確率モデル |
Research Abstract |
発がん過程をヒト体内での細胞の進化過程として捉え、数理的研究を行っている。今年度、ニューヨークにあるSloan-Kettering InstituteのMichor研究室で、主に確率モデルを用いて細胞の体内での動態で解析し、特にがん転移に関する理論的な理解を目指した。 がん転移は発がん過程の中で最終段階に位置付けられてきた(Hanahan and Weinberg,2000 Cell)。しかし、近年の研究で転移を促進する遺伝子変異が見つかり、初期段階のがんでも転移が起こっている可能性が示唆されている(Bernards and Weinberg,2002 Nature)。そこで、我々は増殖しているがん細胞の集団が突然変異により転移能を獲得し、転移能を獲得したがん細胞は一定の確率で原発腫瘍とは別の場所に転移するというモデルを構築した。これまでに行ってきた研究を応用し、がんの診断時に転移細胞が存在する確率やその細胞数に関する公式を導出した。また、がん細胞の数が一定数まで増えたときに患者が亡くなると仮定して、がん診断後に投薬や手術によってどれだけ生存期間を延ばせるかという理論式を導いた。その結果、投薬と手術に関して2つの重要な示唆が得られた。(1)投薬が患者の生存期間に与える効果は、診断時の腫瘍のサイズに関わらず一定である。(2)手術は、腫瘍のサイズが小さいときは効果が小さく腫瘍のサイズが大きいときに、手術しないのに比べて患者の生存期間を大きく延ばす。
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Research Products
(3 results)