2009 Fiscal Year Annual Research Report
救済と遠離――戦後社会福祉における「自立支援」概念の生成と展開
Project/Area Number |
08J05123
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深田 耕一郎 Rikkyo University, 社会学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自立支援 / 救済と遠離 / 介護の社会化 |
Research Abstract |
本研究の目的は戦後日本の社会福祉において「自立支援」概念がいかにして生成し、どのような内実をもって展開してきたかを明らかにすることである。本研究は、「自立支援」の相矛盾する2つの性格を「救済」と「遠離」と呼び、それがいかなるジレンマ状況を生んできたかを解明するものである。 今年度は、「自立支援」の孕む矛盾をミクロ・コミュニケーションとマクロ・システムのふたつの相で描き出すことを課題とした。ミクロ・コミュニケーションについては「自立支援」「エンパワーメント」に対して人格的な関係を前提にする「見守り」を積極的に提示する論文を刊行した(「見守りという希望」新田勲編著『足文字は叫ぶ!-全身性重度障害者のいのちの保障を』現代書館、2009年)。また、「救済」と「遠離」のジレンマが最も先鋭的に現れる事例として、意思疎通が困難な障害者の「自立支援」をとりあげ、支援者=介助者が実践すべき「課題」を探った。これは「介助者の課題-足文字を読むということ」と題し、論文集に寄稿した(杉田俊介・瀬山紀子・渡辺啄編『介助者学』明石書店、2010年)。マクロ・システムについても「介護の社会化」の要求と制度的応答における「自立」概念の相違を検討する学会報告を行った(「戦後日本における『介護の社会化』要求の生成-公的介護保障要求運動の1970年代」日本社会学会、2009年)。 本研究は「自立支援」における「救済」と「遠離」のジレンマがどのような内実をもってきたかを、ミクロとマクロ両側面の実践過程に照準して明らかにしてきた。「自立支援」と呼ばれる営為においては、その両義性ゆえに「救済」と「遠離」の力がつねに駆け引きを演じていくことになるが、本研究では、そうしたトレードオフの関係だけではなく、両者が弁証法的に止揚されていくような実践が展開されていることをも確認した。
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Research Products
(6 results)