2008 Fiscal Year Annual Research Report
基盤的防衛力構想の持続力-51大綱後の日本の安全保障政策をめぐる政治力学
Project/Area Number |
08J05134
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千々和 泰明 Kyoto University, 公共政策連携研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 安全保障政策 / 防衛力整備 / 基盤的防衛力構想 / 所要防衛力構想 / 防衛政策エリート |
Research Abstract |
本研究の目的は「基盤的防衛力構想」の持続性について、これに先行する防衛構想との比較分析、第一次〜第三次防衛大綱の下での歴史分析および政策過程分析を通じ解明することである。第一年目は1950年〜60年代において「所要防衛力構想」が持続した政治力学と、基盤的防衛力構想のそれとの比較分析に力点を置いて研究を進めた。戦後日本の安全保障政策が(1)国際環境における脅威認識を高く見積るか低く見積るか、(2)防衛力の自律性を重視するか同盟国との運用性を重視するかという二つの対立軸の中で導かれたと考えると、防衛力の在り方についての四類型が得られる。日本の防衛構想の変容は、これら四類型の形成と密接に関連していたと考えられる。すなわち、所要防衛力構想とは四類型の間の対立が先鋭化する以前の防衛構想であり、「所要防衛力」整備の目的と内実が問われることはほとんどなく、三自衛隊間の予算争奪戦が限られた資源をめぐって展開されたか、野党の批判を恐れて防衛力整備が小出しに進められたというのが実態であった。これに対し基盤的防衛力構想は1970年代に入り第四次防衛力整備計画が漂流するなど日本の防衛力の在り方をめぐる対立が先鋭化したことで、国内諸集団の間の亀裂を修復するような防衛構想の必要性が生じたことで生み出されたといえる。ただし、基盤的防衛力構想自体の一義的な定義が存在していた訳ではなく、政策エリートを中心とする国内諸集団が自らの主張をそれぞれ「基盤的防衛力構想」と解釈した。そのため基盤的防衛力構想は(1)「低脅威認識・自律性重視」型、(2)「高脅威認識・自律性重視」型、(3)「高脅威認識・運用性重視」型、(4)「低脅威認識・運用性重視」型のいずれの考え方からも説明可能となり、結果的に国内諸集団の統合機能を果たすという、所要防衛力構想とは異なる役割を担ったといえよう。
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Research Products
(1 results)