2010 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二分子膜およびその類似構造系の安定性を膜張力と膜粘弾性から明らかにする研究
Project/Area Number |
08J05174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高城 雄一 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 両親媒性物質 / リン脂質混合物 / 吸着膜 / 表面波 / 表面拡張粘弾性 / 表面張力 / 吸着膜の状態転移 |
Research Abstract |
リン脂質を含む両親媒性物質の形成する吸着膜や会合体の安定性を、表面に生じる表面波の性質から調べる研究を行った。リン脂質系としては、炭化水素鎖長の異なるリン脂質混合物の水溶液を対象とし、鎖長が6のジヘキサノイルホスファチジルコリン(DHPC)と鎖長が8のジオクタノイルホスファチジルコリン(DOPC)の混合水溶液系の表面拡張粘弾性をElectrocapillary wave法を用いて測定した(スペインのコンプルテンセ大学)。電気毛管現象によって生じる表面波の周波数を変化させ、またリン脂質の混合組成を変化させながら測定を行ったところ、DHPCおよびDOPCの各単独成分系に比べて両者を混合した系では拡張粘弾性の値が大きいことが分かった(周波数100~400kHz)。それに加えて、拡張粘弾性の値が極大となる混合組成が、表面張力測定の結果の熱力学的解析から得られる吸着の剰余Gibbsenergyが極小となる組成と概ね一致することが分かった。 一方で、表面に熱的に自然に生じる表面波(リプロン)の性質をレーザーの散乱現象を用いて検出し、そこから表面拡張粘弾性の値を得る準弾性表面光散乱装置のセットアップを研究室において行い、界面活性剤水溶液系への適用を行った。最終的に粘弾性の値を得るまでには至らなかったが、それに必要なスペクトルを得、粘弾性に寄与する重要なパラメーターであるリプロンの複素周波数を得ることができた。これまでに気体膜から膨張膜、あるいは膨張膜から凝縮膜といった異なる吸着膜状態間の転移を起こすことが示されている陽イオン性界面活性剤のドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、非イオン性のエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E1)系のそれぞれについて表面波の複素周波数を調べたところ、その実部と虚部の両者が転移点において特徴的な変化を示し、粘弾性の値と吸着膜の状態転移との間にも相関があることが示唆された。
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Research Products
(3 results)