2008 Fiscal Year Annual Research Report
先進各国の現物給付供給に地方政府の課税能力と租税構造が与える影響について
Project/Area Number |
08J05185
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
古市 将人 Yokohama National University, 大学院・国際社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地方財政 / スウェーデン地方財政 / 地方比例所得税 / 地方累進税 / 現物給付 / 地方税平衡化補助金 / 社会保障制度 / 財政の比較分析 |
Research Abstract |
スウェーデンの戦後の福祉国家拡大を準備した地方比例所得税の形成と福祉政策の関係を戦間期の地方税制に着目し分析した。20世紀初頭、スウェーデンにて工業化が進行し、地方自治体において、インフラ設備、教育、社会福祉への支出が増大した。そのため地方自治体に国庫補助金を支給する議論が高まり、1917年に導入される。19世紀のスウェーデンでは、平均余命の増加、都市への人口移動、産業構造の変化によって人々が公的なケアを求めていた。19世紀末の地方自治体には、それを供給する資源はなかった。年金法、教育制度の整備、救貧法の改正、児童福祉法制定によって国と地方自治体の住民に対する福祉の責任が高まる。そのため、福祉供給を含めた地方自治体の経費を賄う地方税の構築という議論が高まり、1928年に地方税法が制定した。この点をうまく表現しているのが1928年第2院の動議である。その動議は「重い租税負担をもつ地方コミューンへのより効率的な税平衡化」に関するものであり、20世紀初頭から1928年にかけて「経済的領域における拡大と同時に、成人教育、医療・救貧・児童福祉の領域における文化的・社会的発展を伴い」、それは「コミューンに巨額の経費とそれに伴う地方税の増大」をもたらしたとされる。1920年に提案導入された税平衡化の機能を持つていた地方累進税は、この税負担格差是正と税制構築の議論を結びつけた。自治体自身が、自身の経費を賄うといった方向性が形成されることとなる。地方累進税自体は、1938年、国税に統合された。地方自治体の支出を賄う税は地方比例所得税として定着し、自治体間の税負担格差等への対処は戦後の課題とされた。戦後のスウェーデンの政府拡大は、地方財政の拡大によってもたらされた。これは、従来政治史から議論されてきたスウェーデン福祉国家論について、地方財政と福祉政策の関係の重要性を指摘していると言える。
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Research Products
(1 results)