Research Abstract |
精神ストレスによる交感神経活動の高進は,消化器系の血管収縮を引き起こす.一方,運動後は,交感神経活動が低下する.これらのことから,運動後は,精神ストレスによる過剰な交感神経活動の高進が抑制され,消化器系の血管収縮を緩和することができるという仮説が立てられる.この仮説を検証し,消化器系の機能を維持・改善する手段としての運動の有用性について検討することが,本研究の目的であった. 平成20年度は,消化器系血流の新たな測定手法として,カラードップラー法を導入することを計画していた.しかし,予備実験の結果,この測定手法による連続測定が困難であることが判明した.したがって,これまでの研究と同様にパルスドップラー法を用いて血流の測定を行い,研究を進めることとした. まず,運動後の交感神経活動の低下が,消化器系の血流に影響を与えるか否かを検討するために,運動後安静時の消化器系の血流を測定した.その結果,運動後の消化器系の血流に大きな変化は見られなかった.このデータは,今後の研究の基礎となるデータであった.したがって,今後の研究と併せてデータをまとめ,学会発表および論文執筆を行う予定である. これまでに得られた消化器系の血流に関する研究成果について,学会発表および論文執筆を行った.食事に対する消化器系の血流応答を記述した論文では,今後の研究の基礎となるデータを示すことができた.また,咀嚼や味覚に対する消化器系の血流の応答について記述した論文では,消化器系の血流調節における高次中枢の役割を示唆することができた.これらの論文は,アメリカ生理学会誌に掲載された.
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