2008 Fiscal Year Annual Research Report
バリ舞踊の伝承の歴史と舞踊家の社会的地位に関する研究
Project/Area Number |
08J05320
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小池 まり子 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バリ舞踊家 / 舞踊の伝承 |
Research Abstract |
平成20年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 1.東京外国語大学大学院の投稿論文『言語・地域文化研究』(査読有)に、「インドネシアにおける国民文化の創成」の題目で論文を投稿した。平成21年中に刊行される予定である。 2.海外現地調査のための事前準備および実施 インドネシア政府研究技術省(RISTEK)から研究許可を取得し、平成21年1月から現地調査を行っている。これまで、特定のバリ舞踊家が関わる活動に積極的に随行し参与観察やインタビュー調査を行うことによって、舞踊家がおかれている社会的状況が徐々に見えてきた。現時点で報告できることは以下の二点である。 (1)バリ舞踊家の活動領域について バリ舞踊家の活動は、自身の舞踊教室における指導にとどまらず、所属する村落共同体や寺院の領域を越えて、他地域への出張指導や、さらには州政府による芸術祭への関与など広範囲にわたっている。 (2)バリ舞踊家による「舞踊奉納」という行為 バリ舞踊家は、自身が所属する村落共同体や寺院の儀礼において舞踊奉納を行うが、他の儀礼参加者ができない舞踊を奉納することができるという点において、社会のなかで特殊な資格を持つ存在であり、また儀礼に欠かせない舞踊を奉納することによって社会的貢献を果たしているといえる。また一方で、舞踊家自身は「踊る」ことによって、バリ・ヒンドゥー教に対する信仰心の篤さを身体表現によって具現化しているともいえる。 以上のように、バリ舞踊家が広範囲にわたる活動領域のなかで「踊る」という行為には、社会的/個人的レベルにおいてそれぞれ意味があることをより具体的に明らかにするために、今後も継続して特定の舞踊家が関わる活動に積極的に随行し、舞踊家の生活の一部を織りなしている社会組織、宗教という側面から舞踊活動を分析していきたい。
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