2008 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙における重粒子崩壊が宇宙背景放射に及ぼす影響
Project/Area Number |
08J05338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神崎 徹 The University of Tokyo, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙論 / CMB / エネルギー伝搬 / ダークマター |
Research Abstract |
素粒子物理学と宇宙論にはいくつかの未解決の問題が残されており、超対称性理論はその解決法として非常に有力視されている。この理論ではパラメーターにもよるが、寿命が長く質量の重い粒子の存在が予言される。このような粒子は崩壊時に高エネルギーの光子や荷電粒子を放出するので、宇宙の観測に大きな影響を及ぼす。数ある観測の中でも本研究では高エネルギー粒子の宇宙のイオン化の歴史に及ぼす影響を一般的に考察した。宇宙は原始状態においては高温状態なのでプラズマ状態にあるが、膨張による宇宙の冷却化に伴い陽子と電子が結合して(再結合)、水素原子となり宇宙は中性化する。その結果、CMB(宇宙マイクロ波背景放射)は電子に散乱されることなく進むことができる(宇宙の晴れ上がり)。高エネルギーの光子や電子は水素原子を電離することで、再結合の過程を遅らせる。これはCMBの温度の非等方性(温度揺らぎ)に大きな影響を及ぼす。したがって、CMBの温度揺らぎの観測結果から相互作用の弱い粒子に対する制限をつけることができるのである。ただし、そのために高エネルギーの光子や電子のエネルギーのどれくらいの割合が電離に用いられたのかを正確に求める必要がある。従来の研究では低エネルギーの結果を単純に外挿しかつ宇宙の膨張を無視しているので、全く定量的に信用ができないものであった。筆者は初めてこれらの問題を解決し、定量的に正確な計算を行った。更に本研究の1つの応用例として、この計算結果を用いてDMの対消滅散乱断面積の制限を求めた。
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Research Products
(1 results)