2008 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシアのムスリム社会におけるイスラーム知識の伝達に関する人類学的研究
Project/Area Number |
08J05350
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
久志本 裕子 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員DC2
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Keywords | ムスリム / 教育 / 人類学 / マレーシア / 知識伝達 / 伝統 / ポンドック / ウラマー |
Research Abstract |
本年度の研究において達成したのは以下の三点である。1)クアラルンプール周辺のインフォーマル・イスラーム学習機関に関する情報収集2)伝統的イスラーム学習に使用されるジャウィ出版物の収集3)申請者のテキスト解読能力の向上。1)について、マレーシアのイスラーム学習は学校等におけるフォーマルなものが目立ち、これについての研究は無数にある。一方でモスクや私塾におけるイスラーム学習は以前重要性を持つにもかかわらず、研究対象とされてこなかった。本研究ではまず、公的データの存在しないこれらの学習の場についてフィールドワークでデータを収集した。2)これらのインフォーマルな場の多くは「キターブ学習(宗教書講読)」と呼ばれる伝統的イスラーム教育の形式をとり、アラビア語またはジャウィで書かれた本がテキストとして使用される。その多くは19世紀から20世紀半ばにかけて書かれたものであるが、現在なお使用されているものもあり、マレーシアおよび周辺地域におけるイスラームの理解のあり方を探る上で不可欠な資料である。本年度の研究では、クダー州のアロースター、クランタン州のコタバル、及びクアラルンプールの書店で販売されている出版物を中心に約70点を収集した。3)これらの学習機関で使用されるジャウィ・テキストは現代のジャウィと綴りが異なるほか、アラビア語の直訳に近い形式で書かれることが多く、現代マレー語に一般的でないアラビア語の借用語等も多い。このため、その読解には専門的訓練と、一定のアラビア語能力が必要となる。本年度の研究の一環として、専門家の協力を得てこれらのテキスト読解の訓練を進めた。
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Research Products
(1 results)