2009 Fiscal Year Annual Research Report
ある型の多次元確率微分方程式の解の一意性とその挙動について
Project/Area Number |
08J05385
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
楠岡 誠一郎 Keio University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 確率微分方程式 / マリアバン解析 / 密度関数の存在 / 安定過程 / 従属操作 / 基本解の存在 / 絶対連続性 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、一般論が展開できないような悪い条件を持った確率微分方程式の解の挙動についての研究を行った。まず、昨年度から引き続き、係数がリプシッツ連続でないような確率微分方程式の解の挙動についての研究を行った。係数がリプシッツ連続で無いような確率微分方程式は人口モデルや金利モデルなどで現れ、このような確率微分方程式の解析は応用上とても重要である。しかし、マリアバン解析を係数がリプシッツ連続でない確率微分方程式に適用するとき、多くの困難が生じる。最も大きな困難は、解がソボレフ空間に属さないということである。そのため、H-微分に対するソボレフ空間を含むような、確率変数のクラスVhを導入し、確率微分方程式の解の密度関数の存在性についての結果を得た。次に、安定過程をノイズとして入れた確率微分方程式の解に密度関数が存在するかどうか、そして密度関数がどの程度滑らかであるかについて研究した。安定過程をノイズとして入れた確率微分方程式は、荒いノイズの入ったモデルとして物理学や経済学において扱われており、数学的意義だけでなく、応用上の意義もある。マリアバン解析の定式化は多くの研究者により様々な方法で成されているが、既に知られているような定式化では安定過程をノイズとして入れた確率微分方程式に適用できないので、回転不変な安定過程に対してこれまでに知られているマリアバン解析の定式化とは異なる定式化を行った。この新しい定式化により、密度関数の存在とその滑らかさに関するいくつかの結果を得た。この定式化には従属操作を使っている。この定式化により、ブラウン運動に対するマリアバン解析と極めて似た議論を、回転不変な安定過程をノイズとして入れた確率微分方程式に対して行うことができる。さらに、この手法は従属操作を行ったブラウン運動によるマリアバン解析に対しても有効である。
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