2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05416
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
矢島 桂 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 朝鮮鉄道 / 植民地経済 / 朝鮮 / 国有鉄道十二箇年計画 / 投資 / 植民地政策 / 資本市場 / 社債 |
Research Abstract |
2008年度には投稿論文執筆と学会報告を行った。 まず投稿論文「植民地期朝鮮における鉄道投資の基本性格に関する一考察-1923年朝鮮鉄道会社の成立を中心に-」では,1923年朝鮮における私設鉄道会社6社合併=朝鮮鉄道会社の成立に至る過程を明らかにし,そこから朝鮮への鉄道投資の基本性格と,投資家層と植民地統治機関の関係を考察した。植民地期朝鮮における私鉄会社についてはこれまで研究蓄積が乏しく,その実態は明らかではなかった。それゆえこうした私鉄会社の投資家層と朝鮮総督府との関係についても考察されてこなかった。本稿での分析により,植民地統治機関は鉄道建設促進のために投資を保全する政策を実施せざるを得ず,投資家層は植民地統治機関の投資の保全が必要であったことを明らかにした。朝鮮の鉄道事業の投資家層と朝鮮総督府はこうした相互に規定しあう関係にあり,この関係のもとで投資家層は植民地財政に吸着していたことを解明した。 学会報告「植民地期朝鮮における鉄道金融の展開-本国社債市場の発展と植民地投資の再編成-」では,上記の成果をもとに,植民地政策の実施により植民地への投資が保全されることを契機として植民地投資が再編成されていく過程を考察した。朝鮮総督府は1927年に「国有鉄道十二箇年計画」という大規模な政策を実施したが,この政策は経営難に陥っていた私鉄会社を救済する意図を有しており,これを契機に朝鮮鉄道会社が発行する社債の引受けが植民地銀行から本国証券業者へと転換していくこととなった。本報告では,植民地政策の実施を契機として私鉄会社への投資は植民地銀行からの融資から本国証券業者を通じた地方金融機関や生命保険会社の社債投資へ転換していったことを解明した。日本の資本市場史研究は未解明の部分が少なくなく,本報告は植民地証券投資だけでなく,資本市場の実態解明にも貢献となるものである。
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Research Products
(2 results)