2009 Fiscal Year Annual Research Report
実空間法による完全基底関数極限での電子状態理論の構築
Project/Area Number |
08J05484
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩崎 亨 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論化学 / 電子状態理論 / R12法 / 結合クラスター法 |
Research Abstract |
平成21年度は、ガゥス基底関数のほかに、2電子基底関数(ジェミナルと呼ばれる)を用いるR12法、とりわけそれを結合クラスター理論と結びつけたCC-R12法を中心に研究を進めた。CC-R12法がなすヒエラルキーは、我々の先行研究によって、従来のCC法のそれを凌駕する新しいヒエラルキーであることが示されており、今後の高精度電子相関理論の礎となるものである。本年度は、CC-R12法と摂動法を組み合わせた一連の手法、CCSD(2)T-R12法など、の研究を行った。この方法は高次のクラスター演算子の効果を摂動論的に取り扱うもので、計算コストと精度のバランスの取れた手法である。例えば、フッ化水素分子の非調和振動数を、CC法とaug-cc-pVDZと呼ばれる小さな基底関数で計算すると、CCSDTQ法を用いてもおよそ80cm-1の誤差を生じる。 この誤差のほとんどは基底関数の打ち切りに寄るものである。一方でCC-R12法に基づいた計算において、CCSDTQ-R12法は実験値を8cm-1の精度で再現する。すなわちCC-R12法はpredictiveな理論計算において、小さな(すなわち現実的な)基底関数を用いることを可能とする。この研究をまとめた論文は、2009年のThe Journal of Chemical Physics誌のEditor's choiceに選出された。またこのほか、R12法に特有な二電子積分の効率的な評価を可能とする新しいアルゴリズムの開発や、高精度電子相関理論の燃料化学への応用、さらにはR12法の周期系への適用を行った。これらはすべて国際的な学術誌に掲載または受理された。
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Research Products
(4 results)