2008 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫の寄主転換とそれに伴う種分化の進化遺伝学的研究
Project/Area Number |
08J05555
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
大島 一正 National Institute for Basic Biology, 生物進化研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 複合進化 / 寄主変換 / 植食性昆虫 / 産卵選好性 / 寄主利用能力 / 連鎖解析 / QTL解析 / 種分化 |
Research Abstract |
雌の産卵選好性と幼虫の寄主利用能力を担っている遺伝子座を特定するため,クルミレースとネジキレースの交雑を行い,AFLPを遺伝子マーカーとして両形質のQTL解析を試みた.QTL解析では,片方のレースに特有で,かつホモ接合であるマーカー遺伝子座が多いほど解析の精度が増す.しかし野外から採集してきた個体では,上記の条件をみたすホモ接合遺伝子座が少なく,十分な解析ができないことが判明した.そこで,ネジキレースに関しては集団サイズが極めて小さい個体群を見つけ出すことで,ホモ接合を多数持つ個体を交雑に用いる道が開けた.クルミレースに関しては,近親交雑をさせて上述の条件に見合う個体を得る手法を確立した.産卵選好性は親個体をジェノタイピングに使えるが,寄主利用能力に関しては幼虫を使わざるを得ない.そして,幼虫が餌植物を食べられない遺伝子型の場合,卵から孵化した直後に死亡するため,ジェノタイピングは体長0.3mm程の1齢幼虫を用いて行うことになる.このため,小さな1齢幼虫から解析に耐えうるだけのゲノムDNAが得られるよう抽出法の改良を行った.さらに,微量のDNA抽出物からでも,成虫個体を用いた場合と同程度のAFLPバンドパターンの再現性(95%以上)が得られるよう,制限酵素処理やライゲーション,PCRのプロトコルを改良した.集団遺伝学的な解析に関しては,まずサンプリングを重点的に行い,両ホストレースが同所的に生息する地点として岡山県新見市から各ホストレースを採集した.さらに,ネジキレースが単独で生息する地点として京都市と愛知県岡崎市,鹿児島県霧島市でも採集を行った.予備的な結果では,同所的に生息する両ホストレース間ではネジキレースからクルミレースへの遺伝子流入が示唆された.
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