2010 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫の寄主転換とそれに伴う種分化の進化遺伝学的研究
Project/Area Number |
08J05555
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
大島 一正 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 複合形質 / 適応進化 / 植食性昆虫 / 寄主転換 / 種分化 / 連鎖解析 / QTL解析 |
Research Abstract |
幼虫の寄主利用能力を担っているゲノム領域を特定するため,2009年度に作製した戻し交雑(backcross)雑種を用いAFLPを遺伝マーカーとして連鎖解析とQTL解析を試みた.鱗翅目昆虫ではメスで減数分裂時に組み換えが生じないことを利用し,まずF1メスとネジキレースのかけ合わせにより作製したbackcross雑種を用いて各マーカーを連鎖群に振り分けた.その後,F1をオス親にしたbackcross雑種を用いてマーカー間の連鎖距離を算出した.一連の連鎖解析の結果,クルミホソガの染色体数(n=31)に等しい連鎖群を特定できた.各AFLPマーカーへの表現型の回帰により,1本の連鎖群のみが幼虫の寄主利用能力を司っていることが示された.そこでこの連鎖群を集中的に解析するために,合計128通りのAFLPプライマーコンビネーションを検討し,目的遺伝子の近傍(16cM以内)に位置するAFLPマーカーを16個同定した.その結果,幼虫の寄主利用能力に関わる遺伝子は,1.0cMの地図距離内に位置し,ゲノムサイズの推定と組み換え率の均一性を仮定すると,物理距離にして170kbp弱の領域に存在していることが示唆された.モデル生物であるキイロショウジョウバエの近縁種を除くと,野生の植食性昆虫において,寄主植物への適応に関わる遺伝領域を数百kbp以下にまで絞り込んだ研究例は代表者の知る限り他には無く,今後の寄主適応遺伝子の同定に向けて非常に大きな成果が得られた.
|