2008 Fiscal Year Annual Research Report
プロティノス以来の新プラトン主義における創造・発出・開闢の問題群
Project/Area Number |
08J05580
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西村 洋平 Keio University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 新プラトン主義 / ギリシア:ローマ / 哲学 / 古代末期 / 発出論 |
Research Abstract |
1.三世紀の哲学者プロティノスの『永遠と時間について』という論破に焦点をあて、時間的世界を生きるということがどのように捉えられていたのかを明らかにした。従来の研究の大半は、永遠と時間を峻別することに注目していた。しかし、自然学的な観点だけではなく、倫理や形而上学という側面からもプロティノスの永遠・時間論を解明することで、むしろ永遠・時間という両概念の一種のつながりが重要であり、プロティノス哲学の基本でもあると示したことに意義がある。 2.プロティノスの幸福論を整理し、たんに生きるのではなく、いかに良く生きるのかが哲学をとおして吟味されねばならないというソクラテスの根本テーゼが、700年を隔てたプロティノスの時代にも受け継がれ、重要な問題として扱われていたことを明示した。そして、哲学的営みが知性的なものへの愛であるとする『愛について』という論孜の中で展開される、形而上学的な世界発出論をまとめ、時間論や幸福論に垣間見られたものと同様のプロティノスの世界観を見いだした。 3.529年、キリスト教の勢力拡大の結果、アカデメイアが閉鎖されたのちにも著作活動を続けたシンプリキオスに注目し、『エピクテートス『提要』註解』の研究を行った。新プラトン主義哲学の導入でもある同著作のなかに、哲学的営みが良く生きることにつながるという、ソクラテス以来、脈々と続く根本テーゼを見いだした。知性的なものを目指す哲学的探求の最終目的が善なるものであるということが、われわれの世界がいかにして創出されたのかという発出論をとおして説明されていることを指摘した。世界的にもあまり研究が進んでいない分野であり、今後のたたき台になるという点でも意義があった。
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Research Products
(2 results)