2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05585
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小口 祐伴 Waseda University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生物物理学 / 分子モーター / 1分子計測・操作 / ミオシン / アクチン |
Research Abstract |
ミオシンVは、細胞中に張りめぐらされるアクチンフィラメントの上を、一方向に"歩く"生体分子モーターであり、mRNAなどの生命維持に不可欠な物質を、細胞中の適所に運搬する重要な役割を担っている。ミオシンVは"足"と呼ばれ、運動に不可欠な分子構造部位を2つ持ち、その2本の足を交互にアクチンフィラメントと結合・解離させることで一方向に運動する。このようにミオシンVは、たった1つの分子にもかかわらず、両足を制御する機構を備え、アクチンフィラメントの上をあたかも人間のように歩行運動する。しかしながら、この両足を制御する機構に関して不明な点が多い。本研究はこのような両足の協調性を生み出す機構として、ミオシンVからのADP(アデノシン2リン酸)の解離速度が、足に加わる負荷方向依存的に異なることを明らかにし、成果を発表した(PNAS,2008)。 さらにこの性質の詳細を明らかにすることを目的に、足の長さが正常な野生株(WT)と、足の短い変異体(野生株の足の一部を欠損させた)それぞれに対するADP結合能の負荷方向依存性を検討した。具体的には、このような変異体をバキュロウィルス(sf9)発現系によって作成し、顕微鏡下光ピンセット法によって1分子破断力測定を行なった。さらに得られた実験結果をモデル解析することによって、詳細にADP解離速度と負荷方向の関係性を検討した。 その結果、野生株と足の短い変異体とでは、ADP解離速度の負荷方向依存性が異なることを明らかにした。すなわち、これはミオシンVの足の"長さ"によってADPの解離制御が異なることを意味し、ミオシンVの歩行運動にとって、足の"長さ"が重要な要素であることを示唆する。現在これらの成果は投稿準備中の段階にある。
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