2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05585
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小口 祐伴 Waseda University, 理工学術院, 特別研究員PD
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Keywords | 生物物理学 / モータータンパク質 / 1分子計測・操作 / ミオシン / アクチン |
Research Abstract |
モータータンパク質であるミオシンVは、ATP(アデノシン3リン酸)の加水分解で得た化学エネルギーを使って、細胞内骨格であるアクチンフィラメント上を一方向に"二足歩行運動"する。このミオシンVの歩行運動は、分子内に生じる張力(分子内張力)によって制御されると考えられている。しかし、ミオシンVが歩行運動を行う細胞内は、様々なタンパク質や袋状の物体が稠密につまった非常に混雑した環境で、運動中のミオシンVには様々な外力が加わる。また、多数のアクチンフィラメントが複雑に交差しており、フィラメントを乗り換えて運動することもできるが、このような状況下では、分子内張力がいつも一様に生じるとは限らない。 本年度は、細胞内で歩行中のミオシンVに生じると考えられる様々な分子内張力を、光学顕微鏡の下で、光ピンセット法を用いて外力を加えることによって再現した。歩行運動方向だけでなく、様々な角度で負荷を加えた結果、様々な分子内張力に対応して歩行運動を制御できること、横力(運動方向に直交する向きに加わる外力)を受けても安定に運動できることが分かった。さらに、ミオシンVのレバーアームと呼ばれる領域(足に相当する部分)を短くすると、特定方向の分子内張力のみ歩行制御が可能であることも明らかになった。これらのことは、様々な分子内張力に対応した二足歩行の制御に、分子内張力を制御するレバーアーム部が重要であることを強く示唆する。 ミオシンVは、歩行運動によって細胞内物質を輸送しているが、あらゆる外力に抗して安定に運動できるで、効率の良い物質輸送を実現していると結論される。また、私たちの体内ではミオシンVのような役割をもつモータータンパク質が多数存在するが、今回明らかになった性質は、これら多くのモータータンパク質の運動制御機構に共通するものだと期待される。この成果はNature Chemical Biology(2010)に掲載された。
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