2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子系の光化学反応の電子的メカニズム解明のための大規模電子状態計算法の開発
Project/Area Number |
08J05589
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
赤間 知子 Waseda University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Divide-and-conquer(DC)法 / 大規模電子状態計算法 / 自己無撞着場(SCF)収束性 / 電子温度 / 光化学反応 / 励起状態計算 / 実時間発展(RT)TDHF / TDDFT / 電子ダイナミクス |
Research Abstract |
生体分子において非常に重要であると考えられている光化学反応の電子的メカニズム解明のためには、基底状態に加えて励起状態やダイナミクスも扱える高速な大規模電子状態計算手法の開発が必要である。この目的のため、報告者は、divide-and-conquer(DC)法および実時間発展形式の時間依存Hartree-Fock(RT-TDHF)計算に関する下記のような研究を行った。 DC法は基底状態計算の高速化手法のひとつであるが、DC法に基づく自己無撞着場(SCF)計算では、系によっては従来のSCF計算よりも収束性が悪くあまり高速化されないという問題点があった。報告者は、DC計算の電子温度依存性を検証し、電子温度を低くすると計算精度は向上するがSCF収束性は悪化する傾向にあることを明らかにした。この結果に基づいて、SCF過程で電子温度を高温から低温へと変化させるvarying fractional occupation number(VFON)法をDC法に適用したDC-VFON法を開発し、DC計算の精度を保ったままSCF収束性を改善し高速化することに成功した。(Int.J.Quant.Chem.印刷中) 一方、励起状態におけるダイナミクスの解析のためには、励起状態の帰属が重要になると予想される。報告者は、分子軌道を基底として密度行列を記述することにより、RT-TDHF計算においても従来のTDHF計算と同様に励起状態の帰属が可能であることを明らかにした。また、RT-TDHF計算において外場との局所的相互作用を仮定し、短時間フーリエ変換を用いることにより、励起状態の電子雲の振動伝播ダイナミクスの結合による違いを検証した。振動の伝播は、共有結合系では非常に速く一瞬で起こるが、双極子-双極子相互作用系では数十fs程度と遅いことがわかった。また、イオン結合、水素結合等の系では伝播が近距離のみに限られる傾向がみられた。(スーパーコンピューターワークショップ2009にて発表)
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