2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05652
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 一孝 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 哲学史 / ギリシア哲学 / プラトン / 国家 / ミーメーシス / 詩人追放論 / 模倣 / イメージ |
Research Abstract |
今年度は、プラトンが「詩人追放論」を展開する際に背景としている、模倣(ミーメーシス)の概念を分析した。(1)プラトンは『国家』篇において、いわゆる「詩人追放論」を展開する際、二つのミーメーシスを用いているとしばしば言われる。III巻では詩作の吟味において、ミーメーシスとは、真似る主体が、演技などを通じて自分以外の対象に成り代わることだとされている。しかしX巻に至ると、依然として詩作を中心とした論を我々が期待する文脈で、絵画製作とのアナロジーを通じて、ミーメーシスとは虚像製作だと結論付けられる。従来、こうしたミーメーシスに対する分析の相違はプラトンの議論の欠陥であると考えらていたが、どちらのミーメーシスにおいても、模倣者・モデル・模倣物の三者関係の構造が共通していることを見出し、「仮想的なモデルを観衆に提示する(される)」という同一の概念基盤が通底していることを本研究は導き出した。(2)さらに、本研究はプラトン以前のミーメーシスの用例を調査検討することによって、(1)において導き出した概念基盤は、プラトン以前のギリシア人達もまた共有していたという見通しを得るに至った。ミーメーシス概念の歴史的展開・変容の具体的なステップは未だ十分には解明されていない。したがって今後より詳細な文献学的調査によって、ここでの見通しが正しいことを裏付けることができれば、本研究はこれまでのミーメーシス概念史を再構成するための糸口となるだろう。以上の研究成果は、論文「演技・物真似のミーメーシスVS像製作のミーメーシス?」にまとめられ、『古代哲学研究』第41号に掲載が決定している。
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