2008 Fiscal Year Annual Research Report
超イオン伝導物質における伝導特性と構造に関する研究
Project/Area Number |
08J05669
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野寺 陽平 Kyoto University, 原子炉実験所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / 中性子回折 / 高エネルギーX線回折 / リバースモンテカルロシミュレーション |
Research Abstract |
リチウムイオン二次電池への固体電解質としての応用が期待されているLi2S-P2S5系超イオン伝導物質について、可動イオンであるリチウムの存在環境とその伝導メカニズムを解明することが本研究の目的である。平成20年度は、高純度アルゴン雰囲気中で合成したLi2S-P2S5系試料について、海外のパルス中性子施設(英国ラザフォードアップルトン研究所・ISIS、米国ロスアラモス国立研究所・LANSCE)や国内の実験施設(高輝度放射光研究施設SPring-8、日本原子力開発研究機構・研究炉JRR-3、高エネルギー加速器研究機構・放射光研究施設PF)で中性子およびX線を利用した回折・散乱実験を行い、データを取得することに成功した。また実験室においても、リチウムイオン伝導体用の密閉型伝導度測定セルを開発し、イオン伝導材料として最も基礎的な物性である電気伝導度データの取得に成功した。現在、得られた実験データを解析中であるが、今後はこれらのデータを総合的に議論し、構造・基礎物性の両面から本系のリチウムイオン伝導機構を解明していく予定である。さらに、中性子およびX線回折データとコンピュータシミュレーションを組み合わせることで超イオン伝導材料の3次元構造モデルを構築し、リチウムイオンの伝導経路の可視化にも取り組んでいく予定である。中性子はリチウムのような軽元素を観測するのに適したプローブであるが、実験の困難さからリチウムイオン伝導材料の研究報告例は非常に少ない。世界に先駆けてリチウムイオン伝導材料の研究へ中性子を利用する本研究は、応用研究が先行している固体電解質の研究に基礎研究的な視点から固体電解質材料創製の指針を提示し、それによって大きなインパクトを与えることが期待される。
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