2008 Fiscal Year Annual Research Report
磁性強誘電体エピタキシャル薄膜の磁性-誘電性相関現象
Project/Area Number |
08J05725
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前田 和弘 Osaka Prefecture University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチフェロイクス / 強誘電体 / 分極反転ダイナミクス |
Research Abstract |
強誘電秩序と磁気秩序が同時に実現するマルチフェロイクスとよばれる研究対象の一つであるYMnO_3は1000Kに強誘電相転移を、80Kに反強磁性相転移を有する物質である。単結晶において強誘電性ドメイン壁が反強磁性ドメイン壁を伴うことが報告されており、分極反転が容易な薄膜を用いることによって異種ドメイン間の相互作用による大きな交差相関現象が期待できる。今年度は、この物質のエピクキシャル薄膜を用いて反強磁性相転移点近傍における強誘電体の分極反転のダイナミクスに関して詳細な検討を行った。C-V測定においてドメインの運動に対応する誘電率の時間変化を観測することに成功した。その結果、反強磁性相転移点近傍において強誘電性ドメイン壁の移動速度は遅くなっており、分極反転挙動の抑制が示唆された。しかし、このような低温領域での分極反転の異常については欠陥等の存在によるドメインピニングの影響も考えなければならない。そこで、誘電率の周波数特性から電荷トラップ量を調べ、ドメインピニングの影響について議論し、YMnO_3薄膜は低温化に伴い分極反転挙動に対するドメインピニングの効果は小さくなることを示唆する結果が得られた。そのため、低温領域におけるYMnO_3薄膜の分極反転挙動の抑制はドメインピニングの影響ではなく、何らかの磁気的作用が働いていると考えられる。強誘電体の分極反転のダイナミクスを調べることで強誘電体の分極反転機構、特にその核発生密度や成長機構などが明らかになってきた。
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Research Products
(3 results)