2008 Fiscal Year Annual Research Report
誘導多能性幹(iPS)細胞を用いた神経系細胞の誘導と脊髄損傷治療への応用
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08J05766
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 恭子 Kyoto University, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC2)
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Keywords | iPS / 人工多能性幹細胞 / 脊髄損傷 / 神経分化 |
Research Abstract |
現在、脊髄損傷に対する治療法として、ES細胞を用いた細胞移植治療が大きく期待されている。しかし、ES細胞の臨床応用には倫理的問題と免疫拒絶反応の問題が存在するため、それらを回避できる移植細胞源が必要である。 近年、私たちの研究室では、体細胞に数種の遺伝子を導入することにより、ES細胞様人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem:iPS)細胞を作成することに成功した。難治性疾患の患者本人の体細胞からiPS細胞を作り出し、目的の細胞へと分化誘導して移植することが可能となれば、免疫拒絶反応や倫理的問題がない、理想的な細胞移植治療になると考えられる。 しかしiPS細胞由来の神経系細胞が、少なくともES細胞由来の神経系細胞と同等かそれ以上の機能性を有しているかはいまだ不明である。また、iPS細胞は遺伝子導入により人工的に初期化された細胞であることから、慎重に、iPS細胞由来神経系細胞の安全性の確認を行わなければならない。 そこで平成20年度の本研究課題では、マウスiPS細胞由来神経系細胞の機能性および安全性の評価を行った。マウスiPS細胞からニューロスフェア法を用いて神経系細胞の分化誘導を行ったところ、iPS細胞はin vitroで神経系三系統に分化し、また、iPS細胞由来ニューロンは電気生理学的に機能的であることが明らかとなった。 さらに、NOD/Scidマウス脳線条体にiPS細胞由来ニューロスフェアの移植を行ったところ、iPS細胞由来ニューロスフェアは線条体内に生着し、in vivoでも神経系三系統に分化した。このiPS細胞由来ニューロスフェアを脊髄損傷モデルマウスに移植したところ、ES細胞由来ニューロスフェアを移植した時と同等に、後肢の運動機能の回復が認められた。 これらの結果から、iPS細胞由来神経系細胞はES細胞由来神経系細胞と同様の機能性を有すると考えられた。
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Research Products
(8 results)