2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の女子高等教育と「他者」認識の形成―「外地」留学生の受容と存在をめぐって
Project/Area Number |
08J05818
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇都宮 めぐみ Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代史 / 留学 / 女性 / 近代教育 / 他者認識 / 知識人 / 朝鮮:台湾:中華民国:満洲 / 帝国主義 |
Research Abstract |
本年度は、近代教育に関わった知識人の思想と言説において、「朝鮮」・台湾・中華民国・「満洲」の教育やそれら出身の留学生に対してどのような関心が向けられたかを明らかにするために、『教育時報』『婦女新聞』『新女子』『新人』『婦人』など諸雑誌の調査を行った。「外国・植民地」には様々な次元から視線が向けられる一方で、留学生は積極的に言及される対象ではないながら、しかし着実に受け入れられ、取り込まれる存在であったことが推測される。本調査の成果により、その一端が把握できると言え、これまで半ば自明視されてきた「留学生とは誰か」という根本的問いを解く一歩となることを確信している。 また、日本女子大学と女子美術大学を中心に、学校史および留学生政策、留学生像についての調査も行った。これは留学生像を把握するために必要な作業であると同時に、植民地や「外国」に大きな影響を及ぼした近代日本の教育を、具体的な教育機関を通して意味付けるという側面も持つものであり、なぜ留学したのか、留学が女性達にいかなる価値を付与したかという点を考えるための材料を得ることができたと言える。なお、これまでは「内地」という思想的・政治的状況に注目して研究を行ってきたが、女性の人生において留学が与えた意味を捉えるには、留学前後も含めて把握する必要があるという問題意識から、羅〓錫という朝鮮人女性に焦点をあてた調査も行った。韓国語の論文翻訳を行い、それに関わる論稿を一本発表したが、近代の日本留学について議論することとは、現在の思想状況や学問の置かれる立場を考えることでもあるという本研究の立場を、改めて問題提起することができたと考えている。 他にも、『同志社談叢』に発表した論文では、国家儀礼をめぐって留学生に与えられた役割やその表象を分析した。留学生の存在が、日本人や日本社会にとって必要とされていたことを明らかにしたが、それは「外国」「植民地」「我々」の境界を明確に示しつつ、限りなく近付くというあり方であり、本研究の目指す「他者」認識の構造解明のための、土台となる議論を行った。
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