2008 Fiscal Year Annual Research Report
断層年代と小断層解析による背弧域の拡大過程解明-九州北西部の新生代構造発達史-
Project/Area Number |
08J05835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤内 智士 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 伸張テクトニクス / 琉球弧 / 小断層解析 / K-Ar年代 |
Research Abstract |
九州南部から台湾にかけて延びる琉球弧の発達過程は,アジア東縁部の構造発達史を理解する上で重要であり,プレート収束帯における背弧拡大のメカニズムを明らかにする上でも鍵となる.これまで琉球弧の変形は,その背弧海盆である沖縄トラフの拡大と関係づけて論じられることが多く,トラフ拡人以前の変形はあまり注目されてこなかった.本研究は,九州西部域に分布する古第三系および中新統について,野外調査による地質構造の理解,断層破砕帯のK-Ar年代測定,小断層解析を行った. 北部琉球弧における伸張変形の絶対年代を明らかにするため,天草下島に発達する正断層について破砕帯試料のK-Ar年代を測定した.求めたK-Ar年代は中期中新世に正断層活動が起こったことを示す.この年代値は野外調査で観察される断層系や火成岩脈との切断関係と矛盾しない. また琉球弧北端部の古応力場を明らかにするため,熊本県天草上島に分布する上部白亜系および古第三系,および長崎県佐世保地域と五島列島に分布する中新続から小断層スリップデータを用いた古応力場解析を行った.解析の結果,天草上島・五島列島では,古第三系および中新統の傾動前後に引張応力場がはたらき,佐世保地域では中新統傾動の前もしくは傾動初期に引張応力場がはたらいたことがわかった. 上記の結果と古地磁気方位などのデータを総合的に解釈し,北部琉球弧の古第三紀以降の伸張変形を,(1)地層の傾動を伴う伸張変形,(2)鉛直軸回転を伴う伸張変形,および(3)地層の傾動・鉛直軸回転を伴わない伸張変形,の3ステージに区分した.この中で,鉛直軸回転を伴う伸張変形は応力場が変化して既存の断層が再活動することによって起こったと考えられる.また,同様の伸張変形の時間変化は,背弧海盆を伴う他の島弧についても認められる.本研究の結果を中心に学位論文を執筆し,平成21年3月に理学(博士)の学位を取得した.
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Research Products
(2 results)