2008 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期の低栄養と成年期における生活習慣病発症の分子機構に関する研究
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08J05841
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 美智子 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 子宮内発育遅延 / メタボリックシンドローム / エピジェネティクス |
Research Abstract |
胎仔期の低栄養により得られた子宮内発育遅延(IUGR)マウスが成獣期に肥満や耐糖能障害などの疾患感受性を獲得する分子機構を明らかにするため、出生直後より経時的に新生仔期をサンプリングした。生後3週間までは体重のキャッチアップ後まで肝臓や腎臓などの実質臓器は対照群と比較してIUGR群で軽い傾向にあった。脂肪組織は生後1週間頃から肉眼的に確認可能となるが、両群明らかな重量差はなかった。一方、組織学的検討では、生後1週間では対照群と比較してIUGR群の脂肪細胞サイズが大きい傾向があり、脂肪組織の発達に変化がある可能性が示唆された。しかしながら、実験ごとに新生仔期の成長パターンに差が認められ、体重のキャッチアップの時期が一定しなかった。成獣期における高脂肪食負荷時も個体差、実験間のバラツキが大きく、解析対象の絞り込みが困難であった。詳細な検討により、体重のキャッチアップが早い個体ほど高脂肪食負荷による肥満を発症する傾向が強いことが示唆されたため、離乳時から個体識別をするのではなく、出生当日より個体を識別し、個体ごとの成長を評価することにした。更に、新生仔の成長パターンに対する母獣の影響も無視できないため、妊娠マウスとは別に里親を準備することで実験系の安定化を図っている。 脂肪組織と肝臓の遺伝子発現に関する解析により、新生仔期、成獣期のいずれにおいてもコントロール群と比較してIUGR群では、脂肪合成系遺伝子の一部の発現が増加していた。又、IUGR群では腎臓重量が軽く、糸球体数が少ないという特徴が確認され、ヒトIUGRの所見と合致していた。以上より、脂肪組織のみならず肝臓、腎臓なども含めたIUGRモデルとしての有用性が示唆された。
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