2009 Fiscal Year Annual Research Report
音韻的作動記憶の特徴と行動の調整におけるその役割に関する実験的検討
Project/Area Number |
08J05849
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐伯 恵里奈 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 言語的表象 / タスクスイッチング / エクゼクティブ・コントロール |
Research Abstract |
平成21年度は、言語的表象の(1)タスクスイッチングに必要な認知過程への関与、および(2)妨害干渉のコントロール場面への関与に関する認知実験を実施した。 (1)これまで課題の素早い切り替えを効率的に行うために、言語的表象を用いて遂行すべき課題を活性化することが有効であることが示されてきたが、言語的表象による課題の活性化が課題スイッチに必要な認知メカニズムのどのレベルにまで関与しているかについては明らかではなかった。そこで、ひとつの課題に2つの手掛かりを用い、試行毎に遂行すべき課題を呈示する方法を用いた一連の実験を実施した。その結果、手掛かりがスイッチするだけで課題のスイッチ自体は生じない試行においても、言語的表象の関与が認められた。また手掛かりが遂行すべき課題を明示する状況では、手掛かりのスイッチ、課題のスイッチにかかわらず課題遂行への言語的表象の関与は乏しいことが示された。これらの研究結果から、言語的表象による課題の活性化は、遂行すべき課題を指示するラベルを活性化するものであり、現在の課題の反応規則の検索・実行には関与していない可能性が高いことが示された。 (2)タスクスイッチング研究では、ごく短い時間間隔での行動調整における言語的表象の役割について検討してきた。 しかし、より長い時間間隔における行動の調整においても、言語的表象を利用している可能性が、無関連情報・属性からの干渉のコントロールが必要な課題を用いて実施した研究から示唆されていた。そこで、課題目標の設定の難しさを操作した一連の実験を実施し、妨害干渉要因をコントロールする必要がある場面での言語的表象の関与に影響する要因について検討した。その結果、互いに干渉するふたつの課題目標が教示され、実験遂行中に課題目標の変更が求められる場面においてのみ、言語的表象の関与が認められることが示された。この結果は、より長い時間間隔における行動の調整場面おいても、課題目標のコントロール負荷が高い場面では、課題目標の設定とその維持に言語的表象が関与していることを示唆している。
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Research Products
(5 results)