2010 Fiscal Year Annual Research Report
インド哲学における言語コミュニケーション原理-初期新論理学派の文意認識論解明
Project/Area Number |
08J05860
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 陽一 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インド哲学 / ニヤーヤ / ガンゲーシャ / 文意認識 / 新論理学派 / タートパリヤ |
Research Abstract |
本研究は、ガンゲーシャ著『タットヴァ・チンターマニ(TC)』第4部「言葉(シャブダ)の部」前半部の解読を通して、初期インド新論理学派の打ち立てた言語コミュニケーションの原理を解明しようとするものである。この書物の成立に影響を与えたと推定される先行思想史の文献を調査し、その成果に基づいて解読を試みる点に特色を有する。 最終年度にあたる本年度は、これまでの研究の総括としてTCの言語コミュニケーション理論の全貌を俯瞰すべく、主たる研究対象である同書第4巻第1章~第5章前半部での言説の、TC全体の議論における位置づけを検討した。特に第5章「タートパリヤ(話し手の意図)論」章に焦点を当て、ことばの意味理解に欠かせないタートパリヤをガンゲーシャはどう理解しているのか、それはどうして必要とされるのか、という問題に関する議論を、ウダヤナの議論との対比を行いつつ精査した。その結果、従来は言語コミュニケーション原理との関連で主に理解されてきたタートパリヤ論が、ヴェーダ聖典の永遠性をめぐる宗教的議論ともきわめて強い連関を有することが明らかになった。この点については9月に日本印度学仏教学会第61回学術大会で報告し、概要を同学会の『印度學佛教學研究』第59巻第3号で発表した。また、この研究の過程で浮上した、タートパリヤ論の孕む根源的な論理的問題についての批判的な考察を、平成23年度の国際学会で発表する予定である。 3月には科学研究費補助金によって、インド東部~中央に赴き、写本の調査を行った。過去2年間収集してきた未刊の註釈『アーローカ』のベンガル文字写本数点を複写できたので、既に利用している西部および南部の註釈と対照し、難読箇所の解読に役立てる。
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Research Products
(2 results)