2009 Fiscal Year Annual Research Report
インド哲学における言語コミュニケーション原理―初期新論理学派の文意認識論解明
Project/Area Number |
08J05860
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 陽一 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インド哲学 / ニヤーヤ / ガンゲーシヤ / 文意認識 / 新論理学派 |
Research Abstract |
本研究は、ガンゲーシャ著『タットヴァ・チンターマニ(TC)』第4巻「言葉の巻」前半部の解読を通して、初期インド新論理学派の打ち立てた言語コミュニケーションの原理を解明する。この論書の成立に影響を与えたと推定される先行思想史の文献を調査し、その成果に基づいて解読を試みる点に特色を有する。第2年度はTC第4巻第1章~第5章前半部までを対象とし、先行思想との比較作業によって思想史解明を進めつつ、対象箇所を解読する作業を進めた。また、作業の過程でTC第1巻第1章「真理論」における議論が対象箇所の理解のために極めて重要であることが判明し、真理論についても解読を行った。その結果、対象箇所すべてと真理論について粗訳及びシノプシスを作成することができ、そこから得られた成果を2度の研究発表で公表した。9月の国際サンスクリット学会(京都大学)の口頭発表では、TC第4巻冒頭の「言葉の定義」を取り上げ、ガンゲーシャの定義とされているものは、言葉の妥当性根拠に関するインド論理学派の伝統的見解をウダヤナの解釈に従って採用し、簡潔に表現したものであること、但しこの見解は自身によって否定されることを指摘した。11月の研究会では上述の「真理論」とTC第4巻第3章「適合性論」を典拠に、伝統的見解の否定後に示されるガンゲーシャの第2見解を詳細に解明し、伝統的見解との関係について考察した。後者の発表内容は論文「Tattvacinamaniにおける言葉の妥当性の根拠と確定方法」として『インド哲学仏教学研究』誌に掲載された。また、3月には科学研究費補助金によってインド南部に写本調査に赴き、図書館4館を訪問した。その結果、未刊の註釈写本『アーローカ』や、入手困難な刊本『ガーダーダリー』の複写を入手できた。これらは次年度の研究において重要な資料となる。
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Research Products
(3 results)