2008 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖をめぐる雌雄の進化的相互作用:甲虫類の精子間競争と射精戦略
Project/Area Number |
08J05869
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山根 隆史 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 交尾抑制 / 精子間競争 / 付属腺タンパク質 / 生体アミン / 武器形質 / 遺伝的トレードオフ |
Research Abstract |
アズキゾウムシ(以下アズキ)と近縁種のヨツモンマメゾウムシ(以下ヨツモン)においてオスの内部生殖器にメスの交尾受容性を低下させる作用を見出し、この作用は貯精嚢に存在すると思われる3kD〜14kDの即効性、付属腺に存在すると思われる14kDの遅効性の成分によると考えられる。交尾抑制成分の近縁種間の共通性や変異は他の生物種ではあまり例がなく、交尾システムと種分化を解明する上で一つの有力なツールになる可能性がある。 アズキゾウの内部生殖器の抽出物にメスの産卵を促す効果を見出し、器官別と大まかな分子量で分けた抽出物の作用を調べ、この成分は精巣もしくは貯精嚢に存在する分子量が14kD以上の成分による。この成分の構造を分析し作用機構の調査はメスの多数回交尾の意義を解明する上で非常に重要である。 アズキゾウのメスに各種生体アミンの作用を調べたところ、オクトパミンとチラミンがメスの交尾受容性を低下させ、セロトニンとチラミンがメスの産卵を促した。一方、ヨツモンのメスではチラミンが性受容性を低下させ、産卵を促した。これらの結果から生体アミンがオスの精液成分もしくは上記の交尾抑制・産卵刺激成分の作用を仲介することで交尾後のメスの行動を制御していると推測される。これらの結果はこれまでの研究とは違った生理学的な視点から交尾をめぐる両性の利害対立について解明する糸口になると期待される。 オオツノコクヌストモドキにおいてオスの大顎において人為選抜された系統において精巣の大きさと射精量を計測したところ、大顎が小さく選択された系統は大きく選択された系統に比べて精巣のサイズが有意に大きくなり、メスに対する射精量が増加した。これらの結果は本種において武器形質と生殖形質及び交尾行動における遺伝的トレードオフを示しており、武器・闘争の進化と他の形質と行動の阻害についての解明につながると期待される。
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