2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05943
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 志瑞子 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 抄物 / 清原宣賢 / 左伝聴塵 / 毛詩聴塵 / 先行抄 / 新注 / 春秋左氏伝 |
Research Abstract |
本年度は、これまであまり研究されてこなかった「春秋左氏伝」の抄物について、研究を進めた。 学会発表「清原宣賢の左伝抄について」では、清原宣賢の『左伝聴塵』を取り上げ、次のような現象が見られることを指摘した。 (1)『左伝聴塵』の巻十二〜十四は、その他の巻と比べ、宋代の注釈書が多く利用されている。 (2)『左伝聴塵』の巻十二〜十四は、その他の巻と比べ、口語的な語彙が多く現れる。 前年度の学術論文で論じたように、『毛詩聴塵』においても、宋代の注釈と口語的な語彙は一部の巻(巻一〜四)にのみ現れる。『毛詩聴塵』の場合、宋代の注釈と口語的な語彙は、先行する聞書を通じて取り込まれたと考えられる。『左伝聴塵』についても、宋代の注釈と口語的な語彙が同じ巻に集中して見られることから、何らかの先行抄が利用されたのではないかと推測される。『毛詩聴塵』と『左伝聴塵』の共通点を指摘し、宣賢が新注を採用する際、先行抄の影響を受けている可能性を示した点に、本発表の意義があると思われる。 また本発表では、『毛詩聴塵』と『左伝聴塵』の外題に注目すると、宋代の注釈と口語的な語彙が多く現れる巻だけが「聴塵」と書かれ、その他の巻は「抄」となっていることを指摘した。宣賢が外題の違いと内容の違いとを対応させていたとすると、それは抄物の成立過程と関わる重要な問題である。別の資料についても、外題と内容の対応が見られるかどうか、明らかにされなければならない。
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Research Products
(2 results)