2010 Fiscal Year Annual Research Report
「専門職的労働者」の契約上の義務と信認(fiduciary)義務
Project/Area Number |
08J05955
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新屋敷 恵美子 九州大学, 法学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 労働契約の成立 / 当事者意思 / 労働契約の成立の二重構造 / 合意 |
Research Abstract |
本年度は、一年目と二年目において実施したイギリス労働法における労働契約の成立についての判例・学説の分析をまとめ、日本法への示唆を引出し、わが国における労働契約の成立についての体系的理論を提示することに注力した。 その結果、イギリス法においては、労働契約の成立が、契約の成立と契約の性質との二重構造になっており、契約の成立については契約法が、契約の性質については労働法がその内容を決定するようになっており、この二重構造が、わが国の労働契約の成立についてもあてはまることを論証した。具体的には、契約の成立部分は、契約法上契約の成立に要求される、契約締結意思、対価などからなり、契約の性質部分は、労働法によって決定された契約の性質(使用従属関係)からなるとことを明らかにした。 そして、本研究は、これらの労働契約の成立を形作る構成要素が、今後の契約上の権利義務論における権利義務の源となるとし、各構成要素がいかにして権利義務論に反映されるべきかも示した。 本研究の目的は、専門職的労働者の法的義務の根拠や内容の解明であったが、その解明にあたって、まず明らかにされなければならない労働契約の成立における当事者意思の内容・意義が理論化される必要があり、これなくしては、本研究の目的とする専門職的労働者の権利義務論を展開できなかった。したがって、本研究は、専門職的労働者の権利義務論の最初の時点を明確にしたにすぎないが、今後の研究において、本研究の成果を基礎としてその全体像を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(1 results)