2008 Fiscal Year Annual Research Report
「専門職的労働者」の契約上の義務と信認(fiduciary)義務
Project/Area Number |
08J05955
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新屋敷 恵美子 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 契約の成立 / 契約の自由 / 最小限の義務 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画における「契約上の義務」の研究のために、労働契約の成立、とりわけ契約当事者の当事者意思・契約の自由によって、労働契約の成立によって契約当事者間のどのような権利義務内容が確定することになるのか、を中心的に明らかとした。 この点の研究により、労働契約が成立したというためには、労働契約の最小限、すなわち、労働者側の労務提供義務と使用者側の労務供給義務・賃金支払い義務が、当事者を法的に拘束する(enforceable)と認められる程度に強固なものとして、当事者により決定されなければならないという点を、具体的に明らかとした。 また、この点が明らかになったことにより、労働契約の構造における中心部分を明らかとすることができた。本研究は、労働者の契約上の義務の限界を明らかにすることにより、契約を越えて認められる専門職的労働者の信認義務の輪郭を描き出すことを一つの研究の柱としている。したがって、労働契約上の義務の範囲を確定する必要かおる。 一方、労働契約は、労働契約法等の各種の規制、そして労働契約に固有の「付随義務」を受け止める、「権利義務の受け皿」、と称されている。しかし、本研究の開始時点では、契約当事者の契約の自由を介してこれらの規制がどのように当事者の労働契約と結びつくのか、労働法学全般にとって極めて基礎的な論点であるにもかかわらず、その点について明らかとした研究はほとんど見当たらなかった。したがって、本研究においても、労働契約の契約上の義務の全体像を把握することが非常に困難な状況にあった。 そこで、契約の成立の研究により、比較的長期間継続していく労働契約にあっては、上記の規制等を受け止めるために、その中心を貫く心棒として最小限の法的な義務が必要であることを明らかとした。これにより、本研究の「契約上の義務」の中心部分を明らかにした。
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Research Products
(3 results)