Research Abstract |
本研究は,電気流体力学(electrohydrodynamic:EHD)効果をミリメートル以下の微細流路内で発生させることで微小ポンプを形成し,CPUや高温下で使用されるセンサ等の半導体機器の間接冷却技術への応用を目的として,気体または液体冷媒の輸送効率の向上を目指す。EHD効果とは,電界の存在下で流体に力が働き,EHD流と呼ばれる流れを発生する現象である。本年度は,大気圧空気放電下で発生するEHD効果を利用した,EHDガスポンプの研究を進めた。 まず始めに,EHD効果の発生を単純なモデルで表すことができる,コロナ放電駆動EHDガスポンプの実験を行った。ワイヤ電極とロッド電極をアクリル円筒の内部で対向させてコロナ放電を形成すると,流路内径10mm以上では直流モータファンを越える気体搬送効率を達成した。しかし,流路径が小さくなるほどコロナ放電の形成電圧範囲が狭くなり,流路内径4mm以下ではコロナ放電を経ずにスパーク放電が発生してしまった。そこで次に,沿面バリア放電の微細流路への適用を試みた。開放空間でのレーザ・ドップラ流速計測により,沿面バリア放電による気体の駆動力が,放電形成領域である誘電体バリアから高さ数百μmの範囲で働いていることが確認された。そのため,ミリメートル以下の微細流路における気体の駆動力発生が期待でき,流路内壁を誘電体バリアとして,微細流路内で放電を形成した。沿面バリア放電は,微細流路においても開放空間と同様に安定に形成可能であり,流路単位長さ当たりの気体の駆動力を増加するには,流路内壁全面での放電形成が有効であることがわかった。その結果,1mm角の微細正方形流路におけるEHD流の発生に成功した。
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