Research Abstract |
本研究は,電気流体力学(electrohydrodynamic : EHD)効果をサブミリメートル級の微細流路内で発生させることで微小ポンプを形成し,CPU等の間接冷却技術への応用を目的として,気体または液体冷媒の輸送効率の向上を目指す。EHD効果とは,電界の存在下で流体に力が働き,EHD流と呼ばれる流れを発生する現象である。昨年度は,大気圧空気放電下で発生するEHD効果を利用した,ワイヤーロッド型EHDガスポンプの研究を進め,機械式ファンよりも高い気体搬送効率を達成した。本年度は,このワイヤーロッド型EHDガスポンプの解析を進めた。 まず,EHDガスポンプの一次元ベルヌーイモデルを構築した。ポンプの損失係数は,レイノルズ数が小さい領域ではレイノルズ数の増加に対して減少するが,レイノルズ数が大きい領域ではレイノルズ数の増加と共に増加した。レイノルズ数が小さい範囲での損失係数の減少は,流路壁面での摩擦圧力損失の減少,レイノルズ数が大きい範囲での損失係数の増加は,電極によるマイナ損失の増加がそれぞれ主要因であると考えられる。それぞれの損失の計算値は,流路内で層流を仮定した場合に比べ大きくなった。これは,EHD流のもつ渦構造が原因であると考えられる。流路内の流れ構造を観測する手法としては,作動流体である空気に微粒子を含ませることによる可視化,または,数値計算が挙げられる。まず,流路内に線香の粒子を供給し,レーザを照射することで散乱光による可視化を行った。この結果,流路内でのカルマン渦の形成が確認された。次に,有限要素法を用いた二次元モデルの計算を行い,実験結果と比較した。このモデルでは,ナビエーストークス方程式の外力項にクーロン力を加えることで,イオンから中性分子への運動量移行を計算しており,可視化の実験結果と同様のカルマン渦が確認された。
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