2008 Fiscal Year Annual Research Report
サイコパシーの合理性と非合理性:対人的意思決定におけるその機能の検討
Project/Area Number |
08J05962
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大隅 尚広 Nagoya University, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | サイコパシー / 意思決定 / 最後通牒ゲーム / 感情 / 社会的認知 / 自律神経系 / 合理性 / 利己性 |
Research Abstract |
本研究では,サイコパシーの感情機能の低下が社会的行動に影響を及ぼすことを実証するため,最後通牒ゲームという意思決定課題を用いた実験を行った。最後通牒ゲームとは,最後通牒ゲームを課題とし,サイコパシー傾向が意思決定と末梢生理反応に及ぼす影響を検討した。この課題は一度限りの試行において二人で報酬を分け合うものであり,一方が分配額を提案し,もう一方がそれを受諾か拒否で応答する役割を担うことになる。そして,応答者が受諾すると提案通りに報酬が配分され,拒否するとお互いの取り分がゼロになる。すなわち,他者との交渉における不公平な提案を受諾して僅かでも報酬を得るか,報酬を失っても拒否するかという選択をする課題である。結果として,サイコパシーの下位概念である利己性の高群は低群よりも不公正な提案を受け入れる頻度が多いことが示された。また,利己性の低群では公正な提案よりも不公正な提案に対して大きな皮膚電気反応が惹起されたが,高群ではそのような皮膚電気反応の差が見られなかった。この結果から,利己性は感情機能の低下と関連があり,それが公正性に対する関心の低さと結びついていると考えられる。すなわち,人の社会的場面における意思決定に関して感情が重要な役割を担っていること,さらにサイコパシーによる感情機能の低下が利己的な意思決定誘発することを示唆した。したがって,本研究は,人間の社会性の維持における感情の重要性を主張するものとして重要性をもつといえる。また,感情機能が低下しているが故に,サイコパシーのという反社会的パーソナリティが合理的な判断を助長し,報酬の獲得に関して機能的に働く場合があるいうことが示され,我々の社会にサイコパシーが存在する理由を示唆した点で,本研究には意義があると思われる。
|
Research Products
(3 results)