2009 Fiscal Year Annual Research Report
赤潮生物ヘテロシグマが産生するアレロパシー物質の作用機序と生態学的役割
Project/Area Number |
08J05980
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山サキ 康裕 Nagasaki University, 水産学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤潮 / 生化学 / 植物プランクトン / 増殖促進効果 / 増殖抑制効果 / 化学生態学 / 増殖相互作用 / 免疫学 |
Research Abstract |
前年度の研究において、実環境中におけるH.akashiwo(以下、ヘテロシグマ)が産生する高分子アレロパシー物質の生態学的役割を実環境で実証することに世界で初めて成功した。しかし、その増殖抑制および促進の分子レベルでの作用機序に関しては未だ不明である。そこで本研究では、ヘテロシグマによるアレロパシーの分子レベルでの作用機序解明に向け、珪藻Thalassiosira paeudonana(以下、タラシオシラ)、緑藻Chlamydomonas reinhardtii(以下、クラミドモナス)、動物プランクトンや数種動物細胞株などのモデル細胞に対するアレロパシー物質の影響を調べた。 タラシオシラやクラミドモナスの野生型株の増殖は、アレロパシー物質の濃度依存的に抑制されたが、クラミドモナスの細胞壁変異株の増殖は、逆に促進された。一方、アレロパシー物質は、動物プランクトン(シオミズツボワムシおよびアルテミア)や6種の動物細胞株の増殖に影響を与えなかった。以上のことより、ヘテロシグマの高分子アレロパシー物質の効果は植物種に特異的であること、細胞壁の構造の違いによるアレロパシー効果の差異は、植物プランクトンの細胞表面の構造がH.akashiwoのアレロパシー効果(増殖促進および抑制効果)に影響を与えていることを示唆している。 今後、クラミドモナスの野生株と細胞壁変異株をモデル生物として使用し、クラミドモナス両株の細胞内シグナル伝達を比較することにより、増殖抑制および促進の分子レベルでの作用機序解明を試みる予定である。本研究の成果は、アレロパシー物質の種特異的な増殖抑制および促進効果を通じて、赤潮防除技術や水産増養殖における生産効率向上の技術の開発が期待されるだけではなく、単細胞植物の生理学の発展に貢献できることが大いに期待できる。
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Research Products
(4 results)