2010 Fiscal Year Annual Research Report
赤潮生物へテロシグマが産生するアレロパシー物質の作用機序と生態学的役割
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08J05980
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山サキ 康裕 長崎大学, 生物生産学科, 助教
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Keywords | 赤潮 / アレロパシー / 増殖促進効果 / 増殖抑制効果 / 化学生態学 |
Research Abstract |
初年度の研究において、実環境中におけるH. akashiwo(以下、ヘテロシグマ)が産生する高分子アレロパシー物質の生態学的役割を実環境で実証することに世界で初めて成功した。また、前年度の研究において、ヘテロシグマの高分子アレロパシー物質の効果は植物種に特異的であること、および植物プランクトンの細胞表面の構造がヘテロシグマのアレロパシー効果(増殖促進および抑制効果)に影響を与えることを見出した。しかし、その分子レベルでの作用機序に関しては未だ不明である。そこで本年度は、ヘテロシグマによるアレロパシーの増殖抑制の作用機序解明に向け、緑藻 C.reinhardtii(以下、クラミドモナス)の野性型株を用いて、アレロパシー物質の影響を調べた。 クラミドモナス野生型株の増殖は、アレロパシー物質の濃度依存的に抑制された。また、高濃度暴露区では、細胞分裂の直前のクラミドモナス細胞が全体の約90%を占めていた。さらに、これらの細胞を新鮮な培地に単離し(n=10)、経時的に観察を行った結果、ほとんどの細胞が30分以内に分裂し、遊泳を開始した。一方、アレロパシー物質暴露を継続している区では、細胞分裂が進行せず、その後経日的に細胞数が減少した。以上のことより、ヘテロシグマの高分子アレロパシー物質は、クラミドモナスの細胞分裂を阻害することにより、増殖を抑制することが示唆された。さらに、アレロパシー物質の暴露から開放されると直ちに細胞分裂が進行した結果は、初年度の研究で観察された現場でのアレロパシー物質の挙動とよく一致した。 本研究の成果は、アレロパシー物質の種特異的な増殖抑制および促進効果を通じて、赤潮防除技術や水産増養殖における生産効率向上の技術の開発が期待されるだけではなく、単細胞植物の生理学の発展に貢献できることが大いに期待できる。
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Research Products
(2 results)