2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J05990
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浦山 健太郎 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フランス演劇 / 芸術作品の中の障害者像 / 言語 / 身振り |
Research Abstract |
今年度は、十九世紀のフランス演劇作品の中に出てくる障害を持った登場人物のうち、聾唖者を中心に研究を行った。また、中世から十八世紀までの演劇作品における障害を負った登場人物についての概観も行った。(1)十九世紀以前の演劇作品の中の障害者像として、中世の笑劇の例を取り上げ、笑劇という演劇ジャンルに備わった作劇法、中世社会における障害者像の両面から考察し、現実社会と演劇空間双方における障害者の道化的とも言える側面とその対応関係を導き出した。(2)十九世紀の演劇作品に登場する聾唖者像の研究として、十八世紀後半から盛んになる聾唖者教育が演劇作品中の聾唖者像に与えた影響について分析を行い、当時の聾唖者教育では、聾唖の子供がもっぱら教育の対象となっていたこと、聾唖者があらゆる知的活動、生産的活動から排除され、社会の中でアイデンティティを持たない存在であるとする考え方などが、劇作品中の聾唖者像に影響を与えていることを明らかにした。(3)演劇においてパントマイムの重要性が認識されるようになったことと、社会における身振り言語に対する認識の変化との関連性に着目し、音声によるせりふを持たず、当時一般的にパントマイムと呼ばれていた身振りを用いる劇中人物としての聾唖者が19世紀になると盛んに登場するようになる背景を明らかにした。
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