2008 Fiscal Year Annual Research Report
他者への共感を制御する認知神経生理メカニズムの研究
Project/Area Number |
08J06052
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福島 宏器 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 共感 / 感情 / 自己認識 / 他者理解 / 身体内部感覚 / 心拍知覚 / 脳波 / 事象関連電位 |
Research Abstract |
本研究の目的は、他者にたいする共感(感情の共有・理解)が強化または抑制されるメカニズムを明らかにし、さらに共感の強さにおける個入差の原因を解明することである。 初年度となる本年度は、共感の前提となる機構として、自己の感情に対する感受性のメカニズムを調査した。感情に対する感受性には、自己の「身体」に対する感覚、とくに、身体内部の生理状態(心拍や胃腸の状態など)を顕在的・潜在的に知覚する働き(身体内部感覚)が密接に関わっていると考えられる。本研究は、心拍の知覚に焦点をあて、心拍知覚の個人差を検討する行動実験と、神経生理活動の計測実験を行った。その上で、これらの行動指標・神経生理指標と、共感性に関する性格特性との関連を検討した。これまでに得られた主な知見は以下のようにまとめられる。 1自己の身体内に注意を向けて自己の心拍数の計数(カウント)を行う心拍計数課題によって、心拍知覚の敏感さと、不安傾向などの感情に関わる性格特性との相関関係が示された。 2心拍に同期した脳波(事象関連電位)を検出し、この電位上に他者の表情理解課題と比較課題の間で有意な変動を見いだした。 3この心拍知覚に関わる神経活動と、個人の共感性に関する性格特性との相関を示すデータが得られた。上記と併せて、心拍知覚に関連する神経活動神経活動が他者の感情理解という認知活動に関連していることが示唆された。 本研究で用いる心拍知覚課題や心拍と同期した事象関連電位の計測手法は、それ自体が認知神経科学の中での先行研究例が少なく、またこれらの手法を認知活動の検討に組み入れる手法は前例のない斬新なアプローチである。本研究はそのアプローチの有効性を示唆するものであり、共感のメカニズムの解明にとどまらず、一般的な身体感覚と感情、認知、および社会的知性の関連を直接的に検討する方法論を提案する意義も持つ。
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Research Products
(3 results)