Research Abstract |
歯周病は口腔細菌の感染によって発症する炎症性疾患である。また,炎症性サイトカインは複雑にネットワークを形成して,歯周組織破壊を起こすことがしられている。我々は,インターロイキン6(IL-6)が可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)と複合体を形成して,ヒト歯肉線維芽細胞(HGFs)に作用し,VEGFの産生を促進させることを報告した(Naruishi et al.,2003)。すなわち,IL-6は歯周病の悪化をきたす炎症性サイトカインであると考えられる。 リソソーム酵素カテプシンB,Lは結合組織を破壊する酵素である。 近年,細胞膜蛋白であるカベオリン-1が,様々な炎症性サイトカインの刺激伝達系を修飾して炎症反応を制御することが明らかになってきた。 したがって,本研究では,歯周病悪化のメカニズムの一端を明らかにすることを目的に,カベオリン-1が歯周炎の病態に関与するかどうかを探り,将来,カベオリン-1を標的とした歯周炎症制御の臨床応用の可能性を見出すことを目標として研究をすすめてきた。その実施状況を報告する。 1.刺激伝達系の解明 カベオリン-1 siRNAを導入したHGFsを用いて,IL-6/sIL-6Rで刺激した後,MAPK系のリン酸化の程度をウエスタンブロット法により解析した。IL-6は,HGFsのp44/42MAPKおよびJNKのリン酸化を促進し,その下流のAP-1を活性化した。 2.カテプシンB,L発現の検出と活性の測定 上記1の細胞を用いて,IL-6で刺激した後のカテプシンB,L発現の検出と活性の測定を行った。IL-6は,HGFsのカテプシンB,L発現を増強し,その活性を亢進した。 上記1,2の結果は,カベオリン-1 siRNAを導入した細胞において有意に抑制された(p<0.05)。 HGFsにおいてIL-6はカベオリン-1-JNK-AP-1経路を介してリソソーム酵素カテプシンB,L産生を促進することが明らかになった。このことは,カベオリン-1が,IL-6が関わる歯周病の病態形成に関与することを示し,カベオリン-1の産生を制御することで歯周病の病態を変化できる可能性を示唆する。
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