2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗精神病薬のミクログリアを介した神経炎症調整機序の解明から統合失調症の病態を探る
Project/Area Number |
08J06062
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 隆弘 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 非定型抗精神病薬 / ミクログリア / サイトカイン / 統合失調症 / 炎症 / フリーラジカル |
Research Abstract |
近年急速に伸展した脳神経画像研究によって、統合失調症に関しても、脳の特定部位の萎縮が薬物治療開始前から存在することや、病態の進行に伴う萎縮の拡大が指摘されているが、統合失調症における病態治療機序はいまだ不明である。他方、最近の統合失調症薬物療法の中心となっているのは、非定型抗精神病薬であり、脳萎縮を抑制するという報告もある。したがって、代表的な神経変性疾患であるアルツハイマー病と同様に、統合失調症でも神経炎症機序が関与している可能性を想定して、本研究を草案した。中枢神経系の炎症の機序には脳内マクロファージであるミクログリアが深く関わっており、ミクログリア活性化に対する非定型抗精神病薬の影響を検策することによって、統合失調症の発症や再燃の、中枢神経系の炎症を通じたメカニズムを探り、統合失調症の根本的治療法への道筋を明らかにすることをその研究目的とした。定型抗精神病薬に較べて非定型抗精神病薬はLPSやIFN-γによって活性化されたミクログリア由来のフリーラジカル(nitric oxide)や炎症性サイトカイン(TNF-α)の産生を有意に抑制すること、及びその抑制機構には細胞内カルシウムイオン濃度調整が関与していることを明らかにした。さらに特定の非定型抗精神病薬ではPMA刺激由来のsuperoxide産生を抑制した。フリーラジカルや炎症性サイトカインは統合失調症脳内の器質性変化をもたらし、病態の慢性化・不可逆性化に関与する可能性があるとされている。従って、これらの非定型抗精神病薬は急性精神病状態の治療のみでなく、統合失調症の慢性化・不可逆性をも抑制し、陰性症状の発現や認知機能障害予防に効果がある可能性を提示することとなった。
|