2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 建速 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中国史 / 出土文字資料 / 長沙走馬楼呉簡 / 地方財政 / 穀倉 |
Research Abstract |
本研究の目的は、三国呉代の簡牘群である長沙走馬楼呉簡を基本資料に、当時の地方財政システムを解明・復元し、その成果を、秦漢代の簡牘の研究から得られる当該時代の地方財政の諸相と比較検討し、地方財政史中に位置付けることである。本年度は、走馬楼呉簡にみえる穀物財敢について、(1)税目の分析及び各々の賦税史上における位置付け、(2)穀倉における財政システムの復元、について研究を進めた。まず、基礎作業として既公表の走馬楼呉簡(約3万点)の整理・分類を行ない、並行して簡牘の図版と釈文、分類等の情報についてデータベース化の作業を行なった。これらの成果に基づき、上述の目的に即した検討を行ない、2本の論文を上梓した。まず(1)に関連し、「長沙走馬楼呉簡にみえる「限米」」では、「限米」と呼ばれ研る税目について、一般吏民ではなく特殊な身分・職役の人々に課された税目であることを確認し、孫呉政権の支配の一端を明らかにした。続いて(2)に関連し、「長沙走馬楼呉簡にみえる穀物財政システム」では、当該資料にみえる二つの穀倉「州中倉」・「三州倉」について、「三州倉」が郡倉(長沙郡)である「州中倉」に付随する関係にあること、「州中倉」における穀物搬出では、中央の軍糧統括機関である「(右)節度」・「督軍糧都尉」が指示を出したのに対し、穀倉間の移送では「邸閣」や県(臨湘県)が指示を出したことを明らかにした。その上で、これまでに検討してきた穀物財政の枠組みをまとめ、軍糧確保に重点を置いたシステムであることを明らかにした。この他、比較資料収集のために、2009年2月に中華人民共和国甘粛省各地を訪れ、漢代の城址・防衛施設遺跡、出土漢簡の実見調査を行なった。
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