2009 Fiscal Year Annual Research Report
フラクタル上のラプラシアンの構成と測度論的リーマン構造の研究
Project/Area Number |
08J06088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 Kyoto University, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Dirichlet形式 / 時間変更 / Brown運動 / 熱核 / 漸近展開 / 測地距離 / Varadhan型漸沂挙動 / フラクタル |
Research Abstract |
当該年度は主に調和Sierpinski gasket上の標準的な熱核の解析および関連するDirichlet形式の一般論について研究を行い,以下の事実を証明した. (1)一般の再帰的な局所正則Dirichlet空間において,(ある特殊な境界条件をみたす)調和関数のエネルギー測度による時間変更を考えることで自然に1次元区間上の反射壁Brown運動が得られる. (2)調和Sierpinski gasket上の標準的な熱核の各頂点の近傍における短時間漸近挙動は,1次元の通常のGauss核により記述される. (3)調和Sierpinski gasket上の標準的な熱核は,木上[Mathematische Annalen 340(2008),781-804]により導入された調和Sierpinski gasket上の測地距離に関してVaradhan型漸近挙動を示す.すなわち,熱核の対数と時刻の積は時刻が0になる極限で測地距離の2乗の1/2倍に収束する. (1)は「任意の1次元拡散過程はBrown運動の時間変更として表される」という古典的な事実のある意味での一般化になっておりこれ自身興味深いが,さらに上記の(2),(3)が本結果を適切に応用することで得られるなど応用上も重要である.(2)は前年度に得られていた,頂点における熱核の対角部分の短時間漸近挙動の結果を踏まえてさらに詳細な漸近挙動を求めたものであり,これにより対応する拡散過程の頂点の周りでの挙動が1次元Brown運動のそれに非常に近いことが分かったことになる.(3)に対応する結果はRiemann多様体上の標準的な熱核に対してはよく知られているが,(3)は同様の事実が(調和)Sierpinski gasketという「フラクタル」において成り立つということを言っており,非常に興味深い結果といえる. なおこれらの研究結果に基づいて,海外を含む各地の研究会で数回の講演を行い,また博士論文を執筆・提出し平成22年3月23日付けで京都大学博士(情報学)の学位を取得した.
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Research Products
(11 results)