2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラクタル上のラプラシアンの構成と測度論的リーマン構造の研究
Project/Area Number |
08J06088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 Kyoto University, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己相似フラクタル / Laplacian / Dirichlet形式 / 熱核 / 固有値 / Sierpinski carpet / 調和Sierpinski gasket |
Research Abstract |
研究題目の一つであるフラクタル上のLaplacianの構成に関連して、筆者は以前に修士論文及びそれに続く研究の中で、Slerpinski carpet等を含む広い範疇の自己相似フラクタルとその上で定義されたLaplacianに対し、parmion function(Laplacianの固有値の分布のLaplace変換)Z(t)のt↓0での漸近挙動の主要項の抽出と剰余項の大きさの評価に関する結果を得ていた。当該年度前半にはその研究を継続し、最も重要な(generahzed)Sierplnski carpet上の標準Laplacianの場合にはZ(t)のt↓0での漸近挙動が幾つかのtのべきの項と指数的に減衰する項との和の形に表現されるというより詳細な結果を得、またこの結果について海外を含む各地の研究会において数回の講演を行った。「より一般の自己相似フラクタルで類似の結果が成り立つか」というのは興味深い問題だが、これはより一般の自己相似フラクタルでのLaplacianの構成問題が解決されて初めて意味のある問いになる。その意味で、本結果はフラクタル上のLaplacianの構成問題の重要性を裏付けている。他方もう1つの研究題目である測度論的Riemann構造については、調和Sierpinski gasketについて、熱核のGauss型評価をはじめとするRiemann幾何的構造が見出せるという木上(2008)の結果を背景としてさらに詳細な解析を行い次の結果を得た:この場合の熱核p(t,x,y)に対し、xが調和Sierpinski gasketを囲む正3角形の頂点の場合には(√<t>)p(t,x,x)はt↓0のとき正の有限値に収束する。証明の鍵は熱核の漸近挙動の主要部が1次元区間上のLaplacianの熱核に一致することが示せるというもので、これにより短時間・短距離の範囲ではこの場合の熱核がRiemann多様体の場合と同じく「真にGauss型」の挙動を示すことも明らかになった。
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Research Products
(9 results)