Research Abstract |
スクラムジェット噴射流れ場の燃料と空気流の乱流混合の物理を調査することを目的に,2つの内容を並行して行った.共に研究手法は風洞実験とアセトンPLIF計測である.一つは前年度の研究の続きであるが,PLIFによって得られた濃度変動データの空間相関解析から超音速混合流れ場の大規模乱流構造の発達に対する支配的因子を調査した.他方では,米国フロリダ大学の燃焼/推進研究室にて,上記とは異なった噴射形態の流れ場を対象に,燃料と空気流の混合促進の効果を調べた. 大規模乱流構造の挙動の支配的因子として,主流マッハ数(3種類),噴射剤分子量(2種類),噴射運動量流束比(3種類)を変化させ,それらの影響を調査した.その結果,条件によらず大規模乱流構造は最も濃度変動が大きくなる噴流上部の最大濃度の50%軌跡付近に存在すること,重い気体(空気)の場合は乱流構造は流線に対して大きく傾いた楕円であるのに対し,軽い気体(ヘリウム)の場合は流線に対して平行になる,また,これらの挙動が時間平均的な噴流幅と強い関連があることを示した.別途取得した流速分布や密度分布との比較から,空気とヘリウムでの挙動の違いは,Kelvin-Helmholtz不安定性やRayleigh-Taylor不安定性と関連が強いことを明らかにした.噴射条件はスクラムジェット作動に応じて変化すること,混合には大規模乱流が重要な役割を果たすことからこれらの知見は有益である. フロリダ大学では,アイソレータ内に設置された円形噴射孔の直前に薄い三角錐状のPylonを設置し,噴流の空間的広がりなどの挙動に対する効果を調べた.テストセクションはアイソレータ,それよりも大きな断面積を持つ燃焼器があり,実機により近いモデルである.Pylonありの場合は明らかに噴流の物理的位置が上がり,且つ横方向への広がりも拡大した.Pylon設置によって主流全圧の損失なく噴流の混合を促進できること,壁面境界層との干渉が防げるので逆火が抑制できることを示した点は重要である.
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