2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06101
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
友田 真理 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 漢代画像石 / 山東・江蘇地域 / 漢代地域史研究 / 胡漢交戦図 |
Research Abstract |
平成20年度に実施した研究の成果物としては、2008年11月刊行の『中国考古学』第8号に投稿、査読の上採択された論文「胡漢交戦図の分布とその歴史的背景-漢代画像石を中心として-」がある。これは博士学位請求論文の一章を構成する予定のものである。「胡漢交戦図」は漢代画像石の画題として有名なものであるが、その分布が山東・江蘇地域に集中する事実は従来ほとんど注目されず、えびすを打ち破り天下が安寧になるという普遍的願望をあらわしたものとされてきた。しかし山東・江蘇地域は、特に前漢時代の後半期においては辺境警備兵の供給地であったことが近年の研究で明らかにされており、その意味では当該地域の人々が、えびすを打ち破り兵役から解放される願望を、他の地域に抜きん出て強く持っていたことが推測される。このように図像主題の分布状況に対する分析から、漢代における地域的な固有の事情と、図像主題の発生・流行という現象との因果関係が明らかとなる。これは申請者の提示した、画像石の図像を死者のためのもの=死生観の表象として捉えるのみならず、生者が生者の思惑、つまり造形の主体者自身の事情や願望を投影してあらわしたものと見倣し、そこに図像主題の地理的分布状況を勘案することにより、画像石の図像を地域史研究のための資料として活用する方法論を構築するという研究目的とも合致する成果である。 以上の研究成果に伴い、今年度のフィールドワークは対象地域を漢代における北方辺境地域へと変更して実施し、甘粛省敦煌市近辺における漢代の辺境警備施設遺址の視察や、図像的に山東・江蘇地域との関連を見出せる陝西省綏徳県等における画像石の調査を行った。
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Research Products
(1 results)