2008 Fiscal Year Annual Research Report
北東太平洋カスカディア地域メタンハイドレートの有機地球化学的研究
Project/Area Number |
08J06161
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 雅紀 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ガスハイドレート / 深海掘削 / 古細菌 / バクテリア / 膜脂質バイオマーカー / 安定炭素同位体比 / 安定水素同位体比 / メタン |
Research Abstract |
ガスハイドレート濃集域におけるメタン生成過程における微生物活動の寄与を解明する目的で以下の研究を行った。 統合国際深海掘削計画(IODP)の研究航海において採取したガスハイドレートが濃集する掘削堆積物コア試料(掘削深度300m、約20試料×2地点)を用いて、堆積物深部の古細菌およびバクテリアの膜脂質バイオマーカーの分布を明らかにし、また、その安定炭素・水素同位体組成を明らかにした。特に、古細菌の膜脂質バイオマーカーの安定水素同位体組成はこれまで前処理法における回収率の悪さから測定されてこなかった。本研究では古細菌膜脂質バイオマーカーの安定水素同位体比測定法を確立した。それを堆積物試料へと応用し、世界で初めて古細菌膜脂質の水素同位体組成を明らかにした。 古細菌や、バクテリアの膜脂質量は堆積物深部の、特に堆積物下100以深のガスハイドレート層や、ガスハイドレートの安定領域の下限を示すと言われている海底疑似反射面(BSR)という物理的境界付近でスパイク上に増加(〜1mg/gCorg、最低濃度の100から1000倍)しており、微生物の生物量が増加していることを明らかにした。また、膜脂質バイオマーカー(-29.3‰,n=26)と全有機炭素(-24.1‰,n=51)の安定炭素同位体組成を用いて、これらの微生物が従属栄養古細菌であるという事を示した。さらに、ガスハイドレート層の直下において、古細菌の膜脂質バイオマーカーの1つであるmonocyclic biphytaneの安定炭素同位体比の減少(約-40‰)と水素同位体比から、メタン生成菌存在の可能性を示した。 American Geological Survey(USGS)のJohn Pohlmanらとの共同研究により、IODPの掘削試料中のメタンの炭素、水素同位体比と有機物からガスハイドレート形成に関与するメタンの起源について明らかにした。
|